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【第一回 『脳と意識』セミナー@京都】

日時:平成18年8月2日(水曜日) 午後5時30分―午後7時

場所:京都大学 総合人間学部棟  1階 1103講義室

講演タイトル:意識の探求

講演者:金井良太(カリフォルニア工科大学)

講演者プロフィール:

 2000年 京都大学理学部卒業

 2005年 オランダ国ユトレヒト大学博士課程修了(Cum Laude)

 現在    カリフォルニア工科大学生物学科 ポストドクトラル・フェロー

関連書籍:意識の探求(上・下)

主催:人間環境学研究科 教授 松村道一

共済:21世紀COEプログラム[心の働きの総合的研究教育拠点]

事務局:NPO法人ブレイン・インターネット・ラボラトリーズ

問合せ先:bi-semi@bi-lab.org

講演者メッセージ

 「意識」とはいったいなんだろうか。朝目を覚ましてから、夜眠りにつくまで、私たちは、常に大量の情報を浴び、その一部のみが意識にのぼり経験される。 動物にも私たちと同じように意識があるのだろうか。ハエなどの下等動物にも意識があるのだろうか。いつかロボットに意識を持たせることはできるのか。このような素朴な疑問は誰もが抱いたことがあるだろう。だが、なぜ脳内での情報処理が特有の経験となるのかは、人類にとって未だ想像もつかない謎に包まれたままである。現在、科学者たちは意識についてどこまで理解しているのか、どのような研究手法を用いて現在、世界中の脳科学者たちが意識という難問に挑んでいるのか。意識の問題は途方もなく難しい。科学が意識を解明することは不可能ではないかと考えている学者もいる。だが、脳科学は一歩ずつ意識についての理解を深めている。本セミナーでは、現在の神経科学が意識を探求している方法を、脳と意識の研究に興味を持つすべての人に、紹介する。

 特に、クリストフ・コッホの提唱する意識研究の方針を中心に「意識と相関するニューロン活動(NCC)」、「ゾンビシステム」、「非意識ホムンクルス」を紹介する。これらの概念を批判的に受け止めたとしても、これらを基としてアイデアを練ることで、多くの研究テーマが生まれてくる。さらには、コッホが「クオリア」を提唱している「意識のペナンブラ」という未だ推測の段階にある理論も紹介する。

 クリックとコッホは、意識に関する不毛な哲学的議論を繰り返すことよりも、「意識と相関するニューロン活動」を見つけてしまうことが、意識の科学的理解を深めるのにもっとも生産的だと考えている。その試みとして、意識と対応する脳活動の候補を探索した、サルの電気生理学やヒトのfMRIの研究の最新の知見も紹介する。

 また、我々が非意識にどこまで複雑な行動ができるのかを探求することで、意識の理解はいっそう深まる。臨床患者の例などから、実際に大脳を介した複雑な計算に基づく行動が引き起こされても、意識が生じていない場合が多々あることを説明する。クリックとコッホは、このような行動は「ゾンビシステム」に支えられているといっている。それだけ複雑な行動が可能であるにも関わらず生物に意識があるのは、意識に情報がのぼることで初めて可能となる、「意識の機能」があるのではないか。それを検証する動物実験も紹介する。クリックとコッホは、マウスに意識があるのかを検証する実験方法を提案している。

 「非意識ホムンクルス」とは、ジャッケンドフが提案した「意識の中間レベル理論」に基づいた理論で、非常に高次の脳機能である「思考」も無意識のうちに起こり、その結果が我々の意識にのぼるという理論である。また、非意識ホムンクルスにより、古典的なホムンクルスの無限後退の問題を回避することができる。

 意識の科学的研究はまだ始まったばかりだ。あらゆる研究領域で決定的な発見がいつ出てきてもおかしくない。多くの人に、意識研究の希望と展望を伝え、意欲的な学生たちに、将来の世界レベルの脳研究者となる指針を与えることができればと思う。


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