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【第二回 『脳と意識』セミナー@京都】

日時:平成19年7月17日(火曜日) 午後4時30分―午後6時

場所:京都大学 総合人間学部棟  1階 1103講義室

講演タイトル:Perception Bending:知覚改路

講演者:渡邊淳司

 (独)科学技術振興機構 さきがけ研究員

 NTTコミュニケーション科学基礎研究所 客員研究員

主催:人間環境学研究科 教授 松村道一

事務局:NPO法人ブレイン・インターネット・ラボラトリーズ

問合せ先:bi-semi@bi-lab.org

講演者メッセージ

 近年、既存の電子楽器の回路を繋ぎ変え、組み替えることで、未知の機能を発見し、予想もしなかった光や音を出す「サーキット・ベンディング(Circuit Bending)」という行為が多く行なわれるようになった。ベンディングによって生み出された音は、その電子楽器にとってある種のエラーである一方で、そのエラーを逆に、新たな創造の可能性と考える点に、ベンディングのひとつの意義がある。また、ベンディングのもう一つの意義として、電子楽器だけでなく、ある機能を持った回路、ひいては人間をも含めてひとつのシステムと考えたとき、システムにとってのエラーは、そのシステムの構成要素・本質を浮き彫りにする重要な情報であるという側面も持っている。たとえば、音楽を聴いていて、その音がレコードによって生み出されているのか、それともCDによって生み出されているのか、よほど耳のいい人にしかその区別はできない。しかし、パッと音飛びが起きた瞬間、つまり、そのシステムにとってエラーが起きた瞬間、それがレコードなのかCDなのかは、その双方を聞いたことがある人にとっては明白となる。

 このように、ベンディングは、既存システムの組み換えによる新たな創造であるとともに、システムの分析・理解という面から見れば、システムの本質を明らかにするアプローチのひとつとも考えられる。これまでのベンディングでは、前者の組み換えによる創造という点に重きが置かれてきたが、もうひとつの側面、ベンディングによるシステム理解という点にも、私は大きな可能性を感じている。システムの分析・理解の手法として、ベンディングは効率的ではないかもしれない。しかし、その回路を組み換え、試行錯誤し、その効果を観察するという過程は、実感としての理解、自身の身体を通してのシステム理解に繋がると考えられる。私は、このベンディングという手法を知覚研究の領域に応用し、人間の感覚・運動システムの理解、ひいては人間の存在を理解するうえでの、新たなアプローチとして採用してきた。ここでは、自分の研究をいくつか紹介しながら、人間にとって根源的な活動である「知覚」について、ベンディングという視点からその本質について考えてみたい。


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